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『ローズの秘密の頁』


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2016年 アイルランド
3.9 /5点満点

アイルランドのとある精神病院に40年以上も入院しているローズ。病院は取り壊される事になり、彼女を転院させるかどうかを判断する為、グリーン医師がローズの許を訪れる。するとローズは使い古した聖書を取り出し、その余白に書き込まれた長年の彼女の思いを読んで聞かせ、過去を語って聞かせるのだった。
1930年代、ローズは叔母と共に暮らす為、アイルランドの小さな村にやって来た。彼女は叔母の店で働く傍ら、何人かの村の男性と知り合いになる。美しく、また男性たちと堂々と対等に交流を交わすローズは、忽ち村で良くない噂が立ってしまう。中でも若い神父のゴーントは、ローズに強い執着を見せていた。
叔母に森のコテージへと厄介払いされたローズは、ある時マイケルという英国空軍に従軍している村の若者を匿う事になる。彼の操縦する飛行機が近所に墜落し、怪我をした彼をローズはIRAから守ったのだ。急速に接近し、愛し合うようになるローズとマイケル。軈て二人は結婚するも、ゴーントにその関係を知られ、激しく嫉妬した彼によって、二人は離れ離れにさせられてしまう。マイケルはIRAに居所を掴まれて逃亡を余儀なくされ、一方のローズは、ゴーントの密告により「色情症」として精神病院に強制入院させられる。その時ローズはマイケルの子を妊娠していたが、それも彼女を新たな不幸へと追いやるのだった……。

若い頃のローズに、『サイド・エフェクト』のルーニー・マーラ。
年老いたローズに、『ジュリエットからの手紙』『わが命つきるとも』『オスカー・ワイルド』『もうひとりのシェイクスピア』『つぐない』のヴァネッサ・レッドグレイヴ。
マイケルに、『What Richard Did』『フリー・ファイヤー』『シング・ストリート 未来へのうた』のジャック・レイナー。
ゴーントに、『恋のロンドン狂騒曲』のテオ・ジェームズ。
グリーン医師に、『トロイ』『ブーリン家の姉妹』のエリック・バナ。
ジャックに、『ホビット』シリーズ、『ゴッホ~最期の手紙~』、ドラマ『そして誰もいなくなった』のエイダン・ターナー。


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偏狭。狭隘。そんな言葉が思い浮かんだ。何に対してかというと、嘗てのアイルランドのこの何処かの村に蔓延していたかもしれない、人々の悪しき価値観や思想や因習に対してである。本作は邦題の持つもの柔らかな語感からは程遠い内容で、土地柄と古い仕来りのせいで40年以上にも亘って不当な扱いを受けて来た一人の女性の、言語に絶するほどの過酷な物語だ。
村でのローズの振る舞いは、こんにちの私達若者から見て、何ら問題を感じられない。道行く男性の目を見て挨拶し、堂々と会話を交わし、独身で恋人もいないから誘われれば一緒に踊るし、必要があれば車で家まで送ってもらう。その程度である。が、それがこの当時のアイルランドという国の、然も小さくて閉鎖的な村に於いては、どうもご法度であったらしい。ローズは「魔性の女」のレッテルを貼られ、おまけに独占欲が強くて偏執的な神父に目を付けられる破目にもなってしまった。
マイケルとの愛は素敵なものだったけれど、その幸せは余りにも短すぎた。精神病院に入れられた後のローズの姿、彼女が受けた数々の仕打ちは、惨すぎて見るに堪えない。この映画ではマイケルとの僅かなロマンスのシーン以外、本当に過酷で惨い、辛いストーリーに満ちている。

せめてもの救いは、ローズがどんな厳しく辛い目に遭おうとも、マイケルへの愛も息子への愛も失なわず、その愛を指針にして生きて来られた事だろうか。そして物語の結末にも、一応、彼女にとって大きな救いが用意されている。……のだが。あれはちょっと、イージーに作り過ぎだろうと思う。鑑賞した誰もが「そうだろうと思った」と口を揃えて言うであろう結末。同じ結末にするにしても、もうちょっと展開や演出を工夫して、安直な表現にならないように出来なかったものだろうか。
それに、どうせイージーな終わり方にするなら、あのゴーントに徹底的に制裁を加えて終わって欲しかったものである。わたしは別に勧善懲悪至上主義などではないが、ここまで辛く苦しい物語を見せられると、流石にカタルシスが欲しくなる。イージーついでに、あの腹立たしいゴーントとか病院のスタッフとかに思い知らせて終わってくれたら、スカっとしたのに。

そういうわけで、個人的には不満もあるし観ていて楽しい作品でもなかったが、題材は良かったと思うし、役者も良かった。ルーニー・マーラの神秘的な色の瞳が、この役柄にも作風にも合っていた。そして老ローズを演じたヴァネッサ・レッドグレイヴの演技力も、流石の一言である。




by canned_cat | 2019-07-06 19:18 | アイルランド(系)映画 | Comments(0)