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『遥か群衆を離れて』


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2015年 UK
4.7 /5点満点

1870年、英国のドーセット。
早くに両親を失い、自立心の強いしっかり者の女性に育ったバスシーバは、亡き叔父が遺した大きな農場を継ぐ。ホモソーシャルである農場社会で、立派な女主人としての一歩を踏み出したバスシーバ。そんな矢先、隣人である羊飼いのガブリエルに求婚されるも、結婚に興味はないと断った。その後ガブリエルは諸事情から彼女の使用人となり、やり手の女主人と忠実な使用人として、良好な関係を保ってゆく。
農場の経営が軌道に乗った頃、バスシーバは今度は富豪の中年紳士・ボールドウッドから求婚される。彼の人柄には惹かれるものがあり、一旦返事を保留にしたのだったが、そんな折、バスシーバは美男の兵士・トロイと出会う。あっという間に親しくなり、婚約した二人。実はトロイには女性の噂が絶えず、ガブリエルもこの結婚には反対だった。けれども、それには耳を貸さずに結婚を決めたバスシーバは……。

監督は、『偽りなき者』『ディア・ウェンディ』 『光のほうへ』のトマス・ヴィンターベア。
バスシーバに、『わたしを離さないで』『プライドと偏見』『華麗なるギャツビー』『ドライヴ』のキャリー・マリガン。
ガブリエルに、マティアス・スーナールツ。
ボールドウッドに、『ミッドナイト・イン・パリ』『キングダム・オブ・ヘブン』『オスカー・ワイルド』のマイケル・シーン。
トロイに、『パイレーツ・ロック』 『オン・ザ・ロード』のトム・スターリッジ。
ファニーに、『ブーリン家の姉妹』『三銃士/王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船』 『あるスキャンダルの覚え書き』『ブラック・レコード〜禁じられた記録〜』のジュノー・テンプル。


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いやあ、良い作品でした。
元々私、19世紀頃の英国文学が結構好きでして。初期のものですとジェイン・オースティンとか、中流階級の、当時としては進歩的な、自分の頭でちゃんと物を考えられる女性の人生を描いたようなお話が好きなのです。で、この映画も、原作が名高いヴィクトリア朝時代の作家トマス・ハーディの同名小説であり、それを映画化したのが北欧の俊英トマス・ヴィンターベアと聞き、一も二もなく飛びついたわけであります。

正直に言えば、何しろ原作は古い時代の小説ですから、展開は(今の感覚で言えば)ステレオタイプ。主人公が散々遠回りした挙句に、初めから側に居た一人の男性に辿り着き、"彼の深い愛にやっと気づいた!"みたいな……"一番大切な人が、ずっとこんな近くに居たなんて!"みたいな。こんなのはメロドラマでは超定番の展開ですし、実際ラストまで観なくても、バスシーバが最後に誰とくっつくのかは誰にでもわかってしまう、そんな内容です。

え、じゃあそんなお話の何処が面白いの? と思われる方もいるでしょう。
それがねえ、ちゃんと面白いんですよ。
まず、どの描写も丹念且つ丁寧なのが素晴らしい。あらゆる景色も、人間も、人間の心の動きも、さり気なくもじっくりと見つめてあって、画面に表層的ではない深みが出ていました。お蔭でバスシーバの気持ちの推移にも揺らめきにも、説得力がある。
次に、全編に亘って感じられる美的センスの良さと、上品さ。古き良き(かどうは知らないけれど)時代を描くにあたっては欠かせないこの二つの要素に関しては、ほぼ満点だったと思います。
そして、まだ旧弊な価値観が蔓延している時代に於ける、旺盛な自立心を持った女性ならではの恋愛の難しさについて、考えさせられる内容にもなっていた点。バスシーバは、元々孤独には慣れていたし、農場の経営者でもあるので、特に結婚する必要がない。きっと、彼女は一人でも生きていける自信があったんでしょう。それでも、目の前に自分を求める男性が何人も現れて、彼女の気持ちは揺らいでゆく。たとえどんなに自活力があっても、人生を共に歩むパートナーを求めたいと思う事は、決して不自然な事ではありませんからね。
そんな中で彼女が結婚を決めた男性は、遊び人の兵士トロイ。あれだけ堂々と自分を持っていたバスシーバが、呆気なく軽薄なトロイに陥落させられてしまうのは、意外とも言えるかもしれません。ただ思うに彼女、学があったり自立心があったりしても、恋愛に関しては初心だったんですよね。まだ恋も愛も知らなかった。そんな時に、手練手管を持った男にホイホイ持ち上げられて、うっかりのぼせ上っちゃったというわけで。まあ、若い時分には、そんな事もあります。大丈夫大丈夫(笑)。
先程「ステレオタイプ」と書きましたが、現実では、「真実の愛」を見つけるなんていうのは、途轍もなく難しい事。うっかり間違えた相手を選んだり、迷子になってしまう事だって、そりゃあるってもんです。然もこの時代に、インディペンデントな女性が、お金の為でも衣食住の為でもなく相手を選ぶとなれば、決断は却って難しかったでしょう。
そんなバスシーバを演じたキャリー・マリガンも良かったです。持ち前の気の強さと独立心で人生を自ら切り拓く、そんな女性像を好演しておられました。


と、まあそういうわけで、色々と魅力のある作品なのですが。が!
ぶっちゃけそんな事は全部どうでもいいんです(えーっ)。
この作品で私が何より惹かれたのは、ガブリエルを演じたマティアス・スーナールツ(実際の発音は「ショウナーツ」に近い)の色気!!

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やべェまじやべェまじかっけェ_(´ཀ`」 ∠)_
背高いしガタイ良いしおまけにマッツに似てるしどうなってるのこの人! ちょっと、今までノーマークだったよ!!
今後は是非とも彼に注目して、活躍を追ってゆきたいと思いますっ。




by canned_cat | 2018-01-18 21:52 | UK映画 | Comments(0)