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『仮面の男』


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1998年 USA
4.8 /5点満点

デュマの『ダルタニャン物語』第三部、『ブラジュロンヌ子爵』をベースにした作品。
17世紀、絶対王政時代のフランス。若き国王ルイ14世は暴君として君臨し、民衆は度重なる戦争と飢えに苦しめられていた。今や老齢に差し掛かったかつての三銃士・アトス、アラミス、ポルトスは既に引退して久しく、ダルタニアンだけが現役の銃士隊隊長として活躍していた。ダルタニアンはその篤い忠誠心から辛抱強く王を支え、再三にわたって諫言するのだったが、ルイ14世が改心する様子はなかった。
やがて国王の専横ぶりに耐えかねたアトスら三人は、共謀して王のすげ換えを企てる。実はルイ14世には、鉄の仮面を着けられて牢獄に捕らわれている双子の弟・フィリップがいたのだった。牢獄からフィリップを救出した彼らは、仮面舞踏会の日に計画を実行しようとする。だがダルタニアンだけは、主君を裏切ることは出来ないとこの計画を突っぱね、彼らの敵に回るのだった……。

ダルタニアンに、『ミラーズ・クロッシング』のガブリエル・バーン。
アトスに、『コン・エアー』『ラウンダーズ』『ナチスの墓標 レニングラード捕虜収容所』のジョン・マルコヴィッチ。
アラミスに、『浮気なシナリオ』 『キングダム・オブ・ヘブン』のジェレミー・アイアンズ。
ポルトスに、『メルシィ!人生』『パリ、ジュテーム』『ルビー&カンタン』のジェラール・ドパルデュー。
ルイ14世/フィリップの一人二役に、『タイタニック』『華麗なるギャツビー』『マイ・ルーム』のレオナルド・ディカプリオ。


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な……なにこのカッコイイ映画!!(゜゜)

空前のレオ様ブームだった公開当時、日本でもさんざっぱらこの映画が宣伝されていたのは私も憶えています。ただそのせいか、私は今までずっと、これはディカプリオ映画――ディカプリオのディカプリオによるディカプリオのための映画なのだとばかり思い込んでいました。違うじゃないですか! いやごめんなさい違いはしないけど、メインは完全に四銃士の方じゃないですか! 四銃士が死ぬほどかっこいいじゃないですか!! ぎゃーす!!
本作が現在に至るまで人気の高い映画だという事も知っていましたが、決してレオ様の存在「だけ」で支持されている映画ではなかったのですね。とにかく渋四銃士がかっこよくてかっこよくて、気絶するかと思いました。ダルタニアンもアトスもアラミスもポルトスも、みんな男気があって、風格があって、誇り高くて、強くて、紳士で、色っぽい。熟年四銃士の物語ならではの魅力が溢れかえっております。若い四銃士、若い俳優さんではこうはいかなかったでしょう。「おじさんだけどかっこいい」んじゃない、「おじさんだからかっこいい」!

またこの4人が4人とも、役柄に本当にぴったりで。全員、この役にはこの人しか有り得ないと確信できるほどの破格の存在感を放っており、そして4人のうち誰一人として欠けてもならない完璧なコラボレーションが成り立っているのです。彼らを超える四銃士は、後にも先にも、ちょっといないんじゃないだろうか。
どの人もみんなかっこ良かったんですけれども、特にガブリエル・バーンとジェレミー・アイアンズが、個人的にたまりませんでした。だって、ちょっとあの、ダンディにもほどがありませんか……!! ガブリエル・バーンは『ミラーズ・クロッシング』でも硬派で渋くてかなり素敵でしたが、本作ではあれ以上に素敵なんです。それとジョン・マルコヴィッチ、彼は今まで嫌~な役か怖~い役でしか見たことがなくてちょっと苦手な俳優さんだったのだけど、いやいや、善良なマルコヴィッチってすごくいいですね。元々品性のある容貌をしているんだし、もっともっと良い人の役とか普通な役もやればいいのになー。
ディカプリオ氏に関しては、流石に各国を代表するベテラン名優陣の前では、少々霞んでしまいがちでした。ただ、それは無論彼のせいではありません。あの年齢では普通は誰だってそうなります。彼は彼でちゃんと良かったし、むしろディカプリオだからこそ、この作品の「華」になり得たのだろうと思います。

お話の方も素晴らしくてですね。抜群にメリハリの効いた、見どころ満載のドラマでありました。
私は原作は未読なので元のお話がどういうものかはわかりかねるのですが、ちらっと調べたところでは、どうやらこの映画は長大な原作(『ブラジュロンヌ子爵』は『ダルタニャン物語』の中でも最も分量が多く、巻数は6巻にのぼる)から、上手い具合に魅力的な筋書きだけを抽出して、かつ一層観客の興が乗るようなオリジナルな脚色を加えた上、2時間の枠の中にぴたっと収めてみせたという、お手本のような出来の脚本でもって作られているようです。本来、「実はルイ14世には双子の弟がいた!」とか「彼は鉄の仮面を被らされて牢獄に幽閉されていた!」なんていうのは、三流の大衆文芸じみた筋書き(ゴシップ誌に近いかも)と言えるわけですが、それをかくもそそる一流のドラマに仕立て上げた手腕は本当に凄い。それに、元々は三銃士の一員ではなかった若きダルタニアンを、今回もちゃんと「三銃士+1」の存在として登場させ、ただし年月を経た分4人の中で一番篤実で頼りになる人物になっている、という設定にしたところも非常に巧いと思いました。だって三銃士の後日談を観るなら、やっぱりそういう頼もしく年齢を重ねたダルタニアンが見たいですよね。
そんなダルタニアンが三銃士の敵となってしまってからの展開は特に面白く、この先どうなるの!? とハラハラして全く目が離せません。そしてその後に観客を待ち構えているのが、「四銃士」による究極で特大の見せ場。いや、ちょ、なにあのかっこよさ!!(悶絶)なんなのあの勇壮さ!!(眩暈)けしからない!!(歓喜)

細かい事を言えば、最後の方で2~3、とってつけたような余計な台詞があったり、ラウルの肝心なシーンが妙にちゃちかったりと難がなくもなかったけれど、まぁそのくらいはご愛嬌。よく考えたらダルタニアンが過去にした事って結構微妙じゃないかと思わないこともなかったけど、そこもご愛嬌(笑)。年明け早々に観ましたが、早くも私の「今年の一本」の一つになりそうな、そんな予感がする素晴らしい映画でした。




by canned_cat | 2015-01-17 23:02 | USA映画 | Comments(0)