人気ブログランキング | 話題のタグを見る

『キッズ・オールライト』


『キッズ・オールライト』_f0324790_00234319.jpg

2010年 USA
4.5 /5点満点

レズビアンカップルであるニックとジュールスの息子・レイザー(15歳)は、自分の生物学上の父親が誰なのか知りたいと思うようになっていた。18歳の姉・ジョニに協力を頼み、精子バンクで提供者を調べてもらう。結果、彼らの父親にあたる人物が判明し、そのポールという男性に二人は連絡をとる。ポールは独身で自営業の気さくな男性で、レイザーとジョニは彼と親しく行き来するようになる。
この事はやがて二人の両親の知るところとなるが、動揺はしつつも、務めて冷静に、且つ儀礼的にポールと交流するママ達。しかし結局ポールの存在で彼女たちはギスギスしだし、一家に険悪なムードが漂い始める。更に思いもよらない決定的な出来事が起き、ついには家庭崩壊の危機を迎えてしまう。

ママ①のジュールスに、『ビッグ・リボウスキ』『ハンニバル』のジュリアン・ムーア。
ジョニに、『ジェーン・エア』のミア・ワシコウスカ。
ポールに、『ブラザーズ・ブルーム』のマーク・ラファロ。


『キッズ・オールライト』_f0324790_07271228.jpg


『キッズ・オールライト』_f0324790_07273114.jpg


『キッズ・オールライト』_f0324790_07290308.jpg


『キッズ・オールライト』_f0324790_07291520.jpg


『キッズ・オールライト』_f0324790_07293135.jpg


『キッズ・オールライト』_f0324790_07294497.jpg


『キッズ・オールライト』_f0324790_07315035.jpg


『キッズ・オールライト』_f0324790_07320379.jpg



実にInterestingな映画でした。興味深い上に、好意的に「面白い!」と思えるお話。
興味深いといっても、もちろん同性愛者の話だから興味深かった(物珍しい的な意味で)のではありません。同性カップル及び人工授精で生まれたその子供と、その生物学上の父親であるドナーとの関係性が、こうも複雑で繊細なものであったことに対してです。当然といえば当然の話なのですが、今まで私はここまで現実的に想像したことがなかったものですから。
まず、これが「養子」とか「継子」の話だったら、子供が”実の親に会いたい”と願う気持ちももう少し一般的に想像し易いし、また現在の親がそれに嫉妬を覚えたとしても、これまたわかり易い話です。ただ相手が「ドナー」となると、それは最初から「親」としては存在していない人なわけです。現にポールは、ジョニから連絡を貰うまで彼らの存在も知らなかったわけで。そうなると、子供たちにしても、両親にしても、この問題に対して露骨な感情を表しにくいんですよね。そのもどかしげな様子を見て、まずなるほどなぁと感じました。
そして、レズビアンという、女性だけで成立しているカップルの間に男性が介入してくる事への問題もあるようです。ママ達は口にしませんでしたが、もしかしたら、女性同士のカップル(乃至は親)であることに自負を持っている彼女達にとって、「父親」の存在を求められることは、凄く傷つくことかも知れません。穿った見方をすれば、それは自分たちを否定されることにもなってしまいます。
更に、この一家の二人の子供は、それぞれ母親が違います。ジョニはニックが産み、レイザーはジュールスが産んだ子。勿論精神的にはどちらも二人の間の子供だけれど、事実上は片方の親は片方の子と全く血が繋がっていないわけです。つまり、いざとなったら「うちの子はあなたの子とは違うわ」という論法が成り立ってしまう。連れ子同士の結婚でもないのに、二人が望んでつくった子どもなのにこういう考え方が成立してしまう状況に、正直驚きました。う~ん、そうかぁ。
一方、事の発端であるレイザーは、15歳ですから自分のルーツを知りたいと願うのも無理はありません。それに彼は如何にも難しい年頃の男の子といった風情なので、きっと世の中のあらゆることに懐疑的で、上辺だけではない現実を敢えて知りたいのでしょう。そして彼にしてみれば、両親ともに女で、きょうだいも女、女だらけの生活に多少の不満を覚えているのだろうと思います。母子家庭や単に女性の多い家族というのはよくある話ですが、両親がどちらも女性だと、年頃の男の子にとっては人によっては(あくまでも人によってはです)時には不満を感じてしまうものかもしれません。
そのどれもこれもが、いやはや興味深い。本当に、想像以上に難しい問題なんですね、こういうのは。

もし子供たちがもっと大人だったら、この話はこんなにこじれなかっただろうと思います。お互いがもっと冷静になれたでしょうし、両親のこともポールのことも自分のことも、個人個人の存在をもっと尊重できたでしょう。でも、抑々彼らがティーンエイジャーだからこそ持ち上がった問題なのは確か。その意味で、不可欠な問題だったのも確かです。
またポール演じるマーク・ラファロがほら、見た目が胡散臭いのよね(コラ)。いい人なのか良くない人なのか、信用出来るのか出来ないのかいまいちよくわからない。それが余計こじれさせたんじゃないかという気もします(笑)。

難しいの何のと散々書いてきましたが、本作は非常に見やすい映画です。爽やかなタッチで、後味も良いです。




by canned_cat | 2014-04-15 23:58 | USA映画 | Comments(0)